今回はEveの楽曲「廻廻奇譚」(読み方:かいかいきたん)の歌詞の意味を考察していきたいと思います。
この曲は、アニメ「呪術廻戦」の1クール目のOPとして書き下ろされたもので、Eveの持つ声の明るさと作品のダークさが見事に調和し、中毒性の高い一曲となっています。
2021年6月現在、YouTubeの公式動画の再生数は1.8億回に昇り、コメント欄を覗くと外国の方々も多く視聴していることが分かります。
そんなメガヒット曲である「廻廻奇譚」の歌詞にはどのような意味が込められているのでしょうか。
当サイトては積極的にコメントを募集しています。
考察内容に「共感できた」「共感できなかった」など何でも構いませんので、あなたの声をお寄せください。
※承認されたコメントは記事内に残ります。意見主張の場として、興味のある方はご参加くださいませ。
Eve『廻廻奇譚』とはどんな楽曲?【タイトルの意味は?】
Eve『廻廻奇譚』歌詞
有象無象 人の成り
虚勢 心象 人外 物の怪みたいだ虚心坦懐 命宿し
あとはぱっぱらぱな中身なき人間寄せる期待 不平等な人生
才能もない 大乗 非日常が怨親平等に没個性
辿る記憶 僕に
居場所などないから夢の狭間で泣いてないで
どんな顔すればいいか わかってる
だけどまだ応えてくれよ闇を祓って 闇を祓って
夜の帳が下りたら合図だ
相対して 廻る環状戦
戯言などは 吐き捨ていけとまだ止めないで まだ止めないで
誰よりも聡く在る 街に生まれしこの正体を
今はただ呪い呪われた僕の未来を創造して
走って 転んで 消えない痛み抱いては
世界が待ってる この一瞬を抒情的 感情が 揺らいでいくバグ
従順に従った欠陥の罰
死守選択しかない愛に無常気
声も出せないまま傀儡な誓いのなき百鬼夜行
数珠繋ぎなこの果てまでも
極楽往生 現実蹴って 凪いで
命を投げ出さないで内の脆さに浸って
どんな顔すればいいか わかんないよ
今はただ応えてくれよ五常を解いて 五常を解いて
不確かな声を紡ぐイデア
相殺して 廻る感情線
その先に今 立ち上がる手をただ追いかけて ただ追いかけて
誰よりも強く在りたいと願う 君の運命すら
今はただ 仄暗い夜の底に
深く深く落ちこんで不格好に見えたかい
これが今の僕なんだ
何者にも成れないだけの屍だ 嗤えよ目の前の全てから 逃げることさえやめた
イメージを繰り返し
想像の先をいけと闇を祓って 闇を祓って
夜の帳が下りたら合図だ
相対して 廻る環状戦
戯言などは 吐き捨ていけとまだ止めないで まだ止めないで
誰よりも聡く在る 街に生まれしこの正体を
今はただ呪い呪われた僕の未来を創造して
走って 転んで 消えない痛み抱いては
世界が待ってる この一瞬を引用:Eve「廻廻奇譚」歌詞
本楽曲のタイトル「廻廻奇譚」は、「廻廻」が造語であり、少し強引に解釈すると「何度も繰り返す」というような意味に捉えられます。
「奇譚」には不思議な話という意味があるため、それぞれ合わせると「繰り返される不思議な話」といった意味でしょうか。
呪術廻戦の世界観と非常にマッチした素晴らしいタイトルだと思います。
Eveはこの楽曲を作るにあたって、『”まず曲を書くにあたって、マンガを1巻から最新刊まですべて読み返しました。”』
と語っているとおり、楽曲全体が呪術廻戦の雰囲気とリンクした、暗く重たい空気の中に少し光が見えるようなものになっています。
まず曲を書くにあたって、マンガを1巻から最新刊まですべて読み返しました。アニメの1クール目でオンエアされる範囲も教えていただいたんですが、そこだけじゃなくてそこから先もすべて一気に読んで自分の中に「呪術廻戦」という作品を改めて落とし込むようにして。そのうえで一気に書き上げて、監督に90秒のデモを聴いていただきました。
引用:音楽ナタリー
アニメ「呪術廻戦」とは?
『呪術廻戦』は2018年3月から週刊少年ジャンプで連載が開始され、2020年秋にアニメ化もされました。
内容は、人間の負の感情が具現化された「呪霊」と、それを祓う「呪術師」たちとの争いを描くダークファンタジーです。
「呪霊」側と「呪術師」側はお互いに理想とする世界を実現するためにぶつかり合い、そのぶつかり合いの中で多くの印象的なドラマが生まれ、キャラクターも一人一人が非常に魅力的に描かれています。
Eve「廻廻奇譚」の歌詞の意味を解釈【※ネタバレ注意】
ここからは「廻廻奇譚」の歌詞の意味について、自分なりに解釈した内容を述べていきたいと思います。
また、前述のEveのインタビューの内容のとおり、本楽曲は原作と非常に深くリンクしているため考察内容にネタバレが含まれることになります。
閲覧する際はご注意ください。
有象無象がひしめく世界..|1番Aメロ①
有象無象 人の成り
虚勢 心象 人外 物の怪みたいだ
虚心坦懐 命宿し
あとはぱっぱらぱな中身なき人間引用:Eve「廻廻奇譚」
難解な語句が続くため、解説しながら考察を進めていきます。
■「有象無象」:数は多いが、種々雑多なくだらない人や物。ろくでもない連中のこと。
■「虚心坦懐」:先入観を持たず、広く平らな心。また、そうした心で物事に臨む態度
前半で呪霊を、後半で人間を表現していると思ってしまいそうですが、全て人間のことを表現した言葉の羅列であるとして考察を進めます。
一見すると人間にしか見えないが、虚勢を張ったり心のうちでは妖しい欲望や思いを抱いている人間や、
何も考えず楽天的に生きている中身のない人間たちが雑然とひしめいている猥雑で不安定な世の中を描写して、
この歌詞の世界(呪術廻戦の世界観)がどんなものなのかを説明するような内容になっています。
虎杖の行く末は..|1番Aメロ②
寄せる期待 不平等な人生
才能もない 大乗 非日常が
怨親平等に没個性
辿る記憶 僕に
居場所などないから引用:Eve「廻廻奇譚」歌詞
■「大乗」:仏教の二大流派の一。自己の解脱だけを目的とするのでなく、すべての人間の平等な救済と成仏を説き、それが仏の真の教えの道であるとするもの
■「怨親平等」: 敵も味方も同じように処遇すること。 恨み敵対した者も親しい人も同じように扱うこと。
ここでは「呪術廻戦」の主人公「虎杖悠仁」を表すような語句が並んでいます。
「不平等な人生」「非日常」の歌詞で、原作の序盤で両面宿儺の指により、虎杖が一気に非日常的な世界へ足を踏み入れていく場面が思い起こされます。
「大乗」は、当初虎杖が持っていた「正当な死」の哲学にリンクしており、どんな人間も納得のいく最期を迎えるべきだとする思想を表しています。
そんな強い正義感を持っているが呪術師としての「才能もない」彼が、これから巻き込まれる事態を予感させてくれるような歌詞ですね。
また、後半の「怨親平等」は宿儺の敵味方関係なしに気分次第で危害を加えるという性質の描写、
「没個性」は術式がない虎杖の徒手空拳な戦闘スタイルについて描写しており、派手な宿儺と地味な虎杖といった対比がなされています。
「居場所などないから」の一節は、宿儺を取り込んだことで呪術高専から死刑宣告を受けた虎杖のことを示していると解釈できます。
原作のストーリーをなぞらえていますね。
葛藤を乗り越えなければ..|1番Bメロ
夢の狭間で泣いてないで
どんな顔すればいいか わかってる
だけどまだ応えてくれよ”引用:Eve「廻廻奇譚」歌詞
ここで言う「夢」は祖父の「手の届く範囲で人助けをしろ」という願いと、虎杖の持つ「正当な死」への執着のことを示しており、その二つを両立することの難しさに悩む虎杖に、次から次へと困難が押し寄せてきます。
それに対してひたすら応じなければならない虎杖の心の葛藤を描写しているように解釈できます。
戦い続ける…|1番サビ
闇を祓って 闇を祓って
夜の帳が下りたら合図だ
相対して 廻る環状戦
戯言などは 吐き捨ていけと引用:Eve「廻廻奇譚」歌詞
「闇を祓って」「夜の帳」「環状線」の語句から、原作の戦闘シーンが想起されます。
呪霊が現れ、呪術師が帳を下ろし、「廻る」ように繰り返される戦闘を、「戯言」は吐き捨てて淡々とこなしていく様がイメージできますね。
まだ止めないで まだ止めないで
誰よりも聡く在る 街に生まれしこの正体を
今はただ呪い呪われた僕の未来を創造して
走って 転んで 消えない痛み抱いては
世界が待ってる この一瞬を引用:Eve「廻廻奇譚」歌詞
戦闘シーンから更に展開して虎杖の心情や生き様に言及しています。
「誰よりも聡く在る街に生まれしこの正体」とは呪霊のことを指し、それを倒し続けるから「まだ止めないで」くれと願っていると解釈できます。
作中で虎杖は呪術高専からも呪霊からも狙われており、いつ活動できなくなるか分からないような状態です。
そんな状態にはなりたくないと願うのです。
なぜなら、「世界が待ってるこの一瞬」=「呪いのない世界」を実現するまで、どんな困難が待ち受けていたとしても、進み続けると決意したからです。
▼2番の歌詞考察へ▼
たいへん参考になりました。ありがとうございます。
ひとつだけ気になったのが、夜の帳は人が降ろすものではなく、夜の帳が降りる、つまり夜が来た、とひと続きに考えても良いのではないかと思いました。